■ 贖罪(7) - a Letter, With an Earring, In the Lake -

 この手紙が、貴方に渡ることはないと信じています。

 それが前提にあればこそ、私はこのようなことを書いていられるのですから。

 貴方は意味のないことだとお笑いになるでしょうか。

 意味がないわけではないのです。これは、私にどうしても必要な儀式のようなものなのです。

 こうやって、あなたにどうしても、どうしても伝えられなかった言葉を綴る事は。

 

 ああ、私がこの手紙を書き終えた後には、きっと貴方に大変なご迷惑をお掛けするのでしょうね。

 私の限界で出来る限りの準備はいたしましたが、それでも不備は免れ得ないでしょうし。

 そして、何より。

 たとえ私にとっての真実がどうであれ、貴方はこうなったことの原因が、あの事にあるとお考えになるかもしれませんから。

 

 そうではない、ということを…貴方がこの件に関して何も後ろ暗く思うことはないのだということをどうしてもお伝えしたい。

 貴方がこれからも、貴方自身のサクリアのように強く明るい人生を送れるよう。

 けれど私には、もう何かをあなたに伝える手段が何一つ残されていないようなのです。

 それもすべて、私の罪。

 

 許してくれとは言いません。許されるとも思いません。許されたいとも思いません。

 あらんかぎりの罪は、私がこの身に受け止めるべきものですから。

 

 ただ。

 

 ただ一つ。

 

 この想いだけは。

 

 私が一人ではなかった。

 貴方が近くにいた。

 そのことの証である、この想いだけは。

 

 どうかいつか、その罪を赦されますように。

 

 贖罪が、この想いの元へ届きますように。

 

 

 

 なぜ、自分のあるべき立場を捨ててまで、このような選択を取らざるを得なくなるまで、何故そこまでこの想いが大きくなったのか。

 それに関しては、今この時、あえて紙面を割いて綴らなくてもよいことだと思います。

 対のサクリアだとか自分に無い性質だとか、そんな理論付けはいくらでも出てくるけれど。

 

 結局、理由などないのです。

 想いが育つには。

 

 そしてそれを止める術など、私にも誰にも、女王陛下が統べる広大なこの宇宙を探し尽くしても、何処にも存在し得ないのです。

 

 だからきっと、これは私自身の罪なのです。

 想いが芽生えていった、その土壌である、私自身の。

 

 想いは、私の内をどんどんと吸収して、奪い尽くして、大きくなっていきました。

 貴方以外の、ほかの事は、何一つ考えられなくなるくらいに。

 

 ですが土壌である私は、その想いが決して報われることのない事を知っていたのです。

 自分にだけは向けられない、貴方の微笑。

 自分にだけはかけられない、力強く、暖かく、思いやりの込められた言葉。

 報われない想いであることを知りながら、それでも育っていく想いを、私はどうする事も出来ませんでした。

 

 私達のそのような仲を、別に不思議とは思いませんでした。

 私と貴方は、本当に、可笑しいくらい正反対ですものね。

 

 私は、弱い人間です。

 当たり前のような、その関係が、耐えられなかった。

 

 貴方に嫌われてまで、この世に居たくない。

 当たり前であるはずの関係に、そう思ってしまった、私の罪です。

 

 今日の昼、森の湖で貴方にお会いしました。

 嬉しかったです。

 珍しく貴方の言葉が私に柔らかく向けられたと感じたのは、私の心がすでに決まっていたからでしょうか。

 それでも、嬉しかったです。

 

 

 私の右のイヤリング。

 貴方が最後に触れてくれたそれを、この手紙と共に、貴方と最後に逢った森の湖へ沈めようと思います。

 

 これが運命というものの最後の贈り物であるなら、こんなに幸せなことはありません。

 

 この広大な宇宙の、永遠の時間の中。

 貴方に出会えた奇跡に、感謝します。

 

 さようなら。

 

 

 

 

 オスカーへ

 

リュミエール

 

 

 追伸:

 

 何も言わず、終えようと思ってました。

 でもやはり、そう上手くいかないものですね。

 

 最後に、一つだけ、私の我侭を許してください。

 ただ一度、貴方への想いを、言葉に綴ることを。

 

 愛しています。オスカー。