■ 3倍返し

「ようこそいらっしゃいませ、リュミエール様」

「こんばんはーごきげんようです〜、ごはんは食べてきましたー。ちょっと一晩オスカーの部屋をお借りしますね。」

「どうぞごゆっくりお過ごし下さいませ。御用があれば何なりとお申し付けください。」

 ナイトキャップにパジャマ姿、小脇には持参の枕…ではないものの、それに比類する気安さで炎の館に現れた軽装の水の守護聖は、だが相変わらず惚れ惚れとするほど美しかった。廊下を歩み去るすらりとした後姿に向けて、薄く笑みを浮かべ頭を下げる執事の背後で、居合わせたメイド達が手を取り合ってきゃっきゃと小声で盛り上がっている。

 

 事の初めの経緯は彼らにも良く判らないものの、ある時期を境に。

 館の中ではてろってろに甘い顔を見せて水の守護聖を抱き締めたりキスしたり、時にはそれ以上の事に所構わず及ぼうとするようになった、彼らの主人の変貌に。

 事態は容易に館中へ知れ渡り、水の守護聖も私邸の中だけとはいえ恋人のあまりにあからさまに過ぎるそれらに、当初は躊躇いやら戸惑いやら、時には軽い抗議もしたようだが――なにぶんにも館の者全員が明らかに見て取れるほどのオスカーのその溺愛振りに、水の守護聖もやがて諦め、ある意味鮮やかとも思えるほど綺麗に開き直ってこの館に馴染んだ。今ではもはや館の隅々まで勝手知ったる、である。

 彼らの主は現在、またもやの惑星の視察中で不在だが、そこにこそ館の彼ら彼女らが水の守護聖の来訪に、そこはかとなく浮き立ち盛り上がる訳がある。

 炎の守護聖と共に過ごす時間以外にも、こうやって不在の際に炎の館へ姿を見せる水の守護聖。恋人に心を尽くすべく、部屋を彩る植物、花々、淡い聖地の四季に合わせた室内の設え、疲れて戻ってくるであろうひとを、温かく迎えられるように。館の者の手を借りて、あれやこれやと考えを巡らしつつ微笑む水の守護聖の、その想いの尊さと幸福とが匂い立つような美しさと言ったら、他に喩えようがなく。

 あるいはまた、遥かな地にいる人の身を思い遣り、憂いに遠くを見詰め、艷やかな唇から溜息を漏らすその姿。翳を淡く帯びたその姿も、芸術のごとく嘆息するほどで。

 彼らの見ていない所でこの水の守護聖にさんざっぱら思うままのことをし倒しているであろう主に、成り代わろうなどと夢にも思いはしないが、主不在時の水の守護聖の得も言われぬこの姿だけは自分たちだけの秘密にしておこうと、内々で密かなる暗黙の協定が結ばれている程だった。

 

 で、そんな館の者たちには悪いけれども、今晩水の守護聖が炎の館を訪れたのは、心尽くしのためでも溜息つくためでもない。端的に言うなら、炎の守護聖のためですらない。

 

「ふっふふー。うーふーふー。」

 のびー、と。

「んー!」

 外出用の上掛けを既に脱いで、照明の大半は落としてベッドサイドの灯りのみ、すっかり寝姿の薄手のローブ1枚で、この上なく晴れ晴れしい顔をして、だだっ広いベッドの上で四肢を子供のごとく思い切り伸ばすその姿。

「一度でいいから、このベッドでのびのび寝てみたかったんですよねー」

 そう呟くと体勢を変え、ベッドヘッドの落ち着いた色々のクッションの群れに、ぼふー、と顔から突っ込む。遠慮する相手はいない、今晩なら。洗い立てのカバーの匂いと淡い香り付けの薔薇の芳香がした。

 オスカーの身長が相当に高いので、標準サイズを最初から遥かに超えた長さの、それから横幅だって相当にあるベッド、いくら男二人でも普通に寝るには充分な広さがある。普通に寝るなら。

 問題は、物理的な広さではなかった。

 再びごろんと仰向いて、両手両足を脱力させ、普段はそれらを伸ばせない原因たるその人に思いを馳せる。

 

 あの腕、あの手。あの脚。あの瞳。触れ合う肌から伝わるその暖かさ、熱さ。

 

 このベッドで寝る時はいつも――すなわちオスカーと共にこのベッドに居る時はいつも、リュミエールの身体はオスカーのその両手両足にしっかりと絡め取られたままだった。いつでも、夜でも朝でも、寝ても覚めても。だから未だかつて一度も、リュミエールはこのベッドで手足を伸ばして眠ったことがなかった。

 それが彼の真摯な愛情の証だと重々承知していて、もちろん幸せだと思うし、辞めてほしいなどとは毛頭思わない。

 だが守護聖だとて、人の子。

 水の守護聖様だって寝るのもおふとんも大好きで、ほんのりとした恨みがましい気持ちがあったのは確か。水の自邸の寝台より一回り大きいここで一度のんびりしたいと思っていて、今回の視察なら特に気を揉むような心掛かりの要因もなく、だからこそこの度の主の不在時に、こうやって訪れている。

(それにしても……)

 のびのび、を満喫しながら、時々ひどく不思議に思う事をまた思い返す。

 眠っているのに、しかもこれもまた軍人らしいというのか、自室で恋人の自分と共に有って気を許している時間にはこれ以上ないというほど熟睡しているのに、どうして自分を一時すらも離さずにいられるのか。

 一心に自分へ注がれるあの尽きることのない彼の愛情は、どこから湧いて出てくるのか。

 自分が彼のただ一人の相手であるという事が、何かの間違いではないかと未だにふと思う事がある。

『愛してる』

 二人で穏やかに寄り添って過ごす時間の、甘い笑顔が嬉しそうにそう告げる姿。

『愛してる……』

 切羽詰まったように、半ば苦しげに耳元で囁く声。もっともそんな時はたいていベッドの上で、たいてい自分の方が遥かに彼より、彼に追い詰められて、彼の腕の中で喘いでいるのだけど。

(えっと)

 ほんのり顔が赤らむのを自覚し、意識を振り払って、ごろりと横を向き手近なクッションを手に取る。今日は思う存分くつろぎに来たのだ、伸びようが丸まって転がろうが自分の自由、今日なら抱き締める相手がオスカーでなくてクッションでも許される。えい、とばかりに、ぎゅむーと抱き込んだ。

(あ)

 その瞬間、胸に刺し込む、衝撃にも似たもの。

 カバーは全て洗い立てで清潔この上なく、中身も良く天日に干されていて、それでも抱き締めた瞬間、確かに薫った。オスカーの匂い。伊達男の香水でなく、その生命力が彷彿とするような、獣にも似た彼自身の。

 クッションに顔を埋めたまま、大きく、溜息が出た。匂いは恐ろしいまでに直感的に、その人の存在を体の芯へ思い起こさせる。

 ……好きなんだなぁ、と思った。改めて。彼の事が。

 その匂いを初めて知ったのは、想いを告げられ抱き締めてきた彼の腕の中でだった。その身体から直接に伝わる圧倒的な熱量と、ただの一人の人間であることを自分に改めて突き付けてくる、初めて知る彼のその生身の匂いに強い眩暈を覚えながら、オスカーの身体が小刻みに震えていた事を今でも覚えている。そういう自分だって間違いなく震えていたのだろうけど。

 いい匂いだな、と思った時点で、拒絶する選択はもはや残されていなかった。その匂いのする素肌の腕の中で愛撫にまみれて溺れるまでにもさして時間は掛からなかった。

 あまりにも簡単に落ちた自分自身に、一時の気紛れだったと飽き捨てられ、さっさと他所に移られても仕方ない、とふと思ったこともあるけれど、今のところ彼の情愛が自分に対して尽きる気配は一向に見られない。

「尚更お前のことが好きになるので手一杯」だそうだ。彼曰く。「どうしてくれる」とも。

 

 そう言うならばこちらにだって、ひとつ、「どうしてくれる」という気持ちのようなものがある。

 好きというそれまでただの透明だった想いを、何も知らなかった自分へ、その身体の匂いで、その指先が全身に施す愛撫で、重なり滑る唇と舌で、そして自分の秘部の中へ深く深く侵食し、感じさせ、翻弄してくる熱いもので、紛れもない快楽としてべったりと上書きされてしまったことだ。

 好き、人を愛するというのはただそれだけでいいと思っていたのに、こうやって彼を想うこと、それが今ではこの躯の、時に切ない、時にもどかしい感覚に直結するようになってしまった。

 横向きに寝転がったまま、クッションを抱き締める手を離し、躊躇いながら、その手を薄い布越し、自分の腕に、それから…腰に滑らせた。彼が自分にそうするように。ぞくりとする。

 …酷い。オスカーの馬鹿。こんなことを自分の躯に教え込んだのはあの人だ。

「お前、自分の躯が普通じゃないって自覚した方がいい…」

 いつもは冴え冴えと煌めくアイスブルーの瞳が、呆とした目付きで、耳元へ顔を寄せ、熱っぽい吐息とともにそんな言葉を吹き込まれた。以前。よりによって、挿れられている時に。身の裡から広がり全身を覆い続ける快感の中、霞む思考で言われていることの意味が判らずにいたら、彼は繋がったまま上半身を起こした。中に響くその動きにも思わず声が出そうになったけれど、その大きな手で触れるか触れないかというほど微かに腰から胸元を撫で上げられ、屹立する自分の熱いものに指が這い、滴る先端を撫で、その濡れた指が胸のほんの先端を滑らせた。度を越した快感が声にならない艶声と悲鳴になって空気を揺らし、彼が押し入っている箇所の粘膜が蠢いて、その人も小さく呻いた。

「…恐ろしく繊細で敏感で、感じやすい躯。」

 続けて言われた言葉のその後はもはや記憶が曖昧だったので、そこで一人ベッドの上で寝転ぶ現実に立ち返った。

 私のせいじゃない。すべて貴方が私に教えたこと。だいたい普通じゃないって、そうだとしても、それを知ってどうなると言うの。熱を帯びるこの躯と、触れなくても判る、充血して熱いこれとを、貴方の居ない間に持て余すだけなのに。

 もし仮に面と向かって彼にそう言えば、彼は心の底から歓喜し、喜々として触ってくるのだろうなぁと思った。

「…………」

 ……こんな風に?

 留めようのない手が恐る恐るローブの裾をたくし、下着の中で張り詰めるそれへ忍び込む。触れて、思わず吐息が出た。

 彼の熱がどこにも無いのが寂しい。もう片手は自然と、躯に、唇に這う。

「…………あ、」

 屹立を探る指が先端の滴りに触れ、躯に痺れが走った。唇にも、そして胸先にも。どうしようもなく恥ずかしいけれど、指先はそのまま無意識に滑りを辿り続ける。密やかに濡れた音が聴こえて、それに尚更いたたまれなくなった。

 羞恥にベッドへ顔を埋めたら、再度オスカーの残り香が立ち込め、ぞくりとした背筋を軽く仰け反らせた。

「オスカー……」

 心だけでなく、躯までもがこんなにも絡め取られてしまった、その恨み言ももう意識の外だった。

 好き。好き。逢いたい。

 

 急激に長躯に伸し掛られて口を掌で塞がれ、唐突な他人の存在に全身総毛立った。反射的に身悶えて、大きな手で強引に塞がれた口から悲鳴が迸りそうになる。

「俺だ、リュミエール。落ち着け。」

 だが直後に耳に入ったその言葉に、死ぬほど心臓が飛び跳ねたものの、覆われたままの掌の下で辛うじて声は抑えることができた。眩暈う視界の中に映る、紛れもない緋い髪。それからようようと視線の焦点が合って、見えたのは、自分の上で隠しきれない笑みを作る氷色の瞳。

 ゆっくりと口を塞いでいた手が離れ、

「……オスカー?」

 身体は組み敷かれたまま、その姿はどう見ても見間違えようがないのだけど、小さく問うたら、さも可愛いと言いたげに彼の笑みが深くなった。

「ただいま、リュミエール。帰って早々、最高の出迎えをありがとう。」

 笑いながらさらりとそう告げてくる言葉に、先程までの自分の媚態を否応なしに思い出させられた。

 頭に血が登った。幾分かの逆上混じりで。

 長々しい沈黙の後、

「……ひとまず、一旦、避けてもらえますか。」

「はいはい」

 文節をひとつひとつ区切りながらそう告げたら、その程度の反応は想定済みだったのだろう、ぞんざいな返事とともに身を起こしてベッドの脇に立つ。旅装はすっかり解かれて普段の軽装に戻っており、自分がローブの裾を整えながら緩慢にベッドの上で身を起こす様子を、その端麗な顔立ちでにやにやと笑って見下ろしている。

 どんな反応が自分から発せられるのか、明らかに楽しんでいる様子だった。激しい羞恥と沸き起こる怒りに身体が震え、火照る顔を伏せて彼から視線を逸らす。

「……無事のお早いご帰還、大変重畳です。お疲れ様でした。私も、大変、嬉しいです。

 が…、……ご自室に忍んで入るようなことを、なさらなくてもいいのでは?」

「恋人が眠ってるかもしれない所を、騒ぎ立てて押し入るほど野暮じゃないさ」

 ただそれだけで、どこまでも徹底的に気配を消してしまえるのだ。軍人というものは。…いや、この人は。

 自分が訪れてきて既に寝室に入ったと知ってからは、廊下ひとつ歩くのにも音を立てないよう気遣ってくれたのだろうな、という想像に心が緩むが、溢れる怒りを未だ鎮めるには残念ながら至らない。

「吃驚しました。本当に。心底。死ぬかと思いました。あんな拘束などなさらなくても、普通にお声掛けして頂ければ…良かったのに。」

「普通に俺が声掛けして、リュミエール、で、お前が、きゃー、とか大声上げて、」

 きゃーとは何ですか。きゃーとは。不本意。

「何事かとやって来た使用人たちに、お前の乱れた姿を見せるのはもったいなさ過ぎたからな。」

 乱れた姿……。

 俯いたまま、顔をより一層火照らせながら、リュミエールは最後の質問をした。

「……いつから、ご覧になっていたのですか。」

「そうだなぁ、のびのびー、ぎゅー、の辺りから。」

 明らかに含みをもたせた口調で答えられた。要するに媚態の部分に関しては、最初から最後まで全部見られていた、という訳だ。

「ずっと見てたかったよ。可愛かった。一人を満喫してたところ。…ひとりを。」

 ぷっちん、とリュミエールの中で何かが切れ、糸端が明後日の方向に飛んでいくのが判った。

 オスカーは判断を誤った。喋り過ぎた。少々。

「そうですか、ではお望み通り、そこでずっとご覧になってて下さい。ひとりを。」

 甘い笑みとともに当たり前のように近づいてくるオスカーの手を、ぺしん、と片手で払い除けて、リュミエールは火照る顔をきっと上げて断固とした口調でそう告げた。

「は?」

「貴方も仰ったでしょう、今晩は私、ひとりを満喫しに来たんです。私は一人で続きを楽しみますから、貴方はそこでどうぞ好きなだけ、いつまでもご覧になってて下さい。」

 紅潮したままの頬、目元、とろりとした深海色の瞳が帯びる挑戦的な光に、オスカーは混乱して口走った。

「えーと、いや、ほら、ここからじゃよく見えないし。」

「わかりました、よく見えればいいんですね。」

 云うや否や、リュミエールはベッドの上でローブの裾をからげ下着を脱いで放り出し、ローブ自体もたくし上げて一気に脱いだ。オスカーの口が言葉にならない小さな叫びを飲み込む。

 流石に羞恥が残るのか、リュミエールはオスカーに背を向け、肩越しにオスカーへ挑戦的な視線を投げかけたまま、伸ばした腕の先、その手がゆっくりと脱いだローブをベッドの上へ落とした。

 ベッドサイドの僅かな明かりに照らされた、ほんのりと色付いた一糸纏わぬ躯、背から腰への曲線、艶やかな海色の髪。物言いたげに僅かに開いた、朱く色づく唇、伏せた水色の睫毛の奥からこちらを見詰めて離さない深海色の瞳。

 完璧な、一箇の芸術だった。この上なくなまめかしい。

 呆然とした表情で、ごくり、と喉を鳴らしたオスカーに、リュミエールは多少溜飲が下がる思いがした。何ひとつ身に着けていない躯を、ぼふり、とベッドに横たえ、彼に背を向けたまま肩越しに再度振り返れば、呆然としたままオスカーが硬直している。

 本当に、誰のせいだと思っているのだろう。彼の居ない時間を耐え難く寂しいと思う、こんな躯にされてしまったことを。

「……オスカー…」

 視線を外してベッドに顔を埋めれば、彼の残り香が再度微かに匂って再び下半身が反応を始め、それを彼から覆い隠すように膝を曲げて蹲った。

 手が伸びた。オスカーが、いつも自分にそうするように。彼の視線の陰で、くちゅ、と濡れた音がする。

「…は………」

 キスが欲しい。いつもこのあたりでくれるのに。感覚に乏しい唇へ指を当て、関節を吸い、噛んだ。無意識に喉が反る。もう片手はゆるゆると、緩やかに、だが先程から続くその動きを止めることは出来ず、湿った音が断続的に響いた。

 もっと、欲しかった。貴方のくれるもの。教えてくれたもの。その体温、その躯の重み、その肌の感触、その指の愛撫。唇には深い深いキス、全身を探る舌、…そして私の中に押し入って滑り、貴方にも私にも快楽を与える、熱い熱い塊。

「オスカ……」

 

 躯から唐突に全ての刺激が消え失せた。

 両手首を片手で頭上に纏められ、ぱたん、と躯が簡単に表へ返される。

 ぱっちり目を開けば目の前に、鍛えられた胸筋と腹筋を晒し、残る片腕を抜いてから服を放り投げるオスカーが居た。

「ええと、オス」

「悪魔か貴様は。」

 性急に重なった唇から深々と熱い舌がねじ込まれる滑りの感触に、全身が一気に疼いた。思わず上げた声が二人の唇の間でくぐもった音になり、それが消える間もないうちに刺激を欲しがっていた乳首を抓み上げられ、んん、あ、と声が漏れた。

 空気を求めて唇を離して思い切り息を吸い込んだら、汗ばんだ熱い躰から噎せ返るほどの彼の匂いが立ち込め、脳髄まで染み渡るそれに眩暈がする。

 熱い滾りを強く刺激されて悲鳴が出そうになるが、濡れた手はすぐ離れて後ろを手早く解してゆく。

「あ、ん、早い、や、」

「我慢できない。大丈夫。」

 何が大丈夫、と思ったが、意味がすぐ判った。指と入れ替わりに入ってくる彼のそれは既に激しく濡れていて、かつ避けようも無い程にがちがちに固まっていた。

 熱く滑る塊が一気に最奥までを快楽で貫き通した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………………。

 

 

 

「……この次の出迎えも趣向を期待していいかな? 奥方。」

 やっぱり拘束されたままの彼の腕の中、力の入らない手で、ぺこ・ぺこ・ぺこ、とその緋色の頭を三度叩いた。