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霧。霧。霧。霧。霧。霧。霧。霧。霧。霧。霧。
山の天気は移ろいやすい。
さっきまで快晴だったゲレンデは、100を数えるほどの間に一面乳白色の霧に包まれてしまった。
濃い霧だった。腕をまっすぐ伸ばすと、自分の指の先が見えなくなるほどの。
霞む。霞む。霞む。霞む。
何もかも。
周りの景色も。
自分の体も。
ふと、一緒に滑っていたあの人のことを思い描く。
その時、その部分の思考だけ、霧が晴れたように。
軽く苦笑した。
……この乳白色の霧の中で、あの人の紅い髪は、さぞかし目立つでしょうね……。
……この乳白色の霧の中で、あいつの水色の姿は、まるで雪の精のようだろうな……。
霞む。霞む。霞む。霞む。
何もかも。
過去も、未来も。
自分の想いも。
そんな時。
唐突に、自分のすぐ傍に、その姿が見えた。
あの人が。
あの人が。
時折、霧のベールに覆われながら。
それでも、紛う事なき、
紅い髪が。
水色の髪が。
視線が、合う。
紗が掛かるようなその表情を確かめようと、
手を伸ばした。
手を伸ばした。
伸ばされた手と
手が、触れ合った。
見えるのは、
濃い霧と、
あの人と、
あの人の手に触れる、自分の手と、
自分だけ。
世界に、
2人きりで。
触れていただけだった手と手の、指と指が絡んだ。
視線と視線が合わされたまま、
ごく自然に、身体を寄せ合って、
唇と唇が、重なり合った。
……どうか この人の この想いが
……どうか この人の この想いが
この山の天気のような 一時の気紛れでありま ように……